研究概要 |
知的教育支援システムの研究においては,近年,教え込むのではなく,学習者自身が自発的に学ぶことをいかにして支援するかが最も重要な課題となっている.この課題を解決するための最も基本的な課題となるのが,学習者にいかにして学習への内発的動機づけを与えるかという問題である.本研究では,この内発的な動機づけを与える手段として,挙動シミュレーションを用いて認知的葛藤を喚起する手法を確立し,さらに定性推論を用いた診断制御を実現することを目指している.平成9年度においては,まず,(1)誤りを反映した挙動シミュレーションの診断機能を実現した.この際,定性推論技術として既に確立されているQSIMにおける定性シミュレーション,およびDQ解析における差分シミュレーションを用いた.これらの機能を用いた診断結果が妥当なものとなることを,人間によるシミュレーションの有効性判定の比較において確認した.さらに,平成9年度においては,(2)誤りを反映させる対象としてのメタファの利用の検討を枠組みの設計を行った.これまでのシミュレーションでは,直接観測可能な物体の動きによって誤りを可視化し,認知的葛藤を喚起していたが,この方法では可視化できる誤りの範囲が限られてくる.そこで,メタファを利用することにより,可視化可能な誤りの種類を拡大することが有望な方法と考えられる.本年度においては,力や質量等の直接観測できない物理量を,矢印,メータ,数値で表現する方法を提案し,そのようなメタファによる可視化が有効であることを確認している.これらのメカニズム化については,来年度以降の課題となっている.
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