研究概要 |
知的教育支援システムの研究においては,近年,教え込むのではなく,学習者自身が自発的に学ぶことをいかにして支援するかが最も重要な課題となっている.この課題を解決するためには,魅力ある教材の構成法や間接的なヒントの提示法などの様々な課題を解決していかなければならないが,その中でも最も基本となるのが,学習者にいかにして学習への内発的動機づけを与えるかという問題である.本研究では,この内発的動機づけを与える手段として,挙動シミュレーションを用いて認知的葛藤を喚起する手法の確立と,さらに定性推論を用いたその診断・制御の構築を行っている. 本年度では,(a)誤りを反映した挙動シミュレーションの診断轡能の実現,(b)誤りを反映させる対象としてのメタファの利用法の検討,を行った.誤りを反映した挙動シミュレーションを有効に運用するためには,正しい挙動シミュレーションとの間に生じる差異を診断するメカニズムが必要となる.本年度においては,定性シミュレーションの手法を用いて,正しいシミュレーションと誤りを反映したシミュレーションとの間に定性的な差異が存在するかどうかを診断する機能を実現している.また,系を変動すれば定性差が現れるような場合も存在するが,そのようなパラメータが存在するかどうかを診断する機能を,比較解析の手法を用いて実現している.また,誤りによっては,速度や加速度で定性差を出せなかったり,またたとえ出せても速度や加速度の誤りとして表現することが誤りの修正へと結びつける上で適切でない場合も考えられる.そこで,誤りを反映させる対象として,力,質量等を利用することを目的として,メタファを導入し,そのメタファの不自然な挙動として誤りを顕在化し,認知的葛藤を喚起する手法を提案している.この手法の実装および評価は次年度において行う予定である.
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