研究概要 |
研究代表者および分担者らは,大気-森林キャノピ-間の運動量輸送を予測するため,長野県南箕輪村にある信州大学農学部附属演習林内のヒノキ林において,森林内外の風速分布および乱流フラックスから森林樹木が風により受ける力を算出をした。森林キャノピ-内の運動量フラックス(M)の鉛直勾配を測定し,森林キャノピ-の任意の高さzにおける風による荷重(F(z))は,F(z)=∂M/∂z(ここで,は空気密度)として求めた。超音波風速計3台を,森林上と森林キャノピ-内2高度に設置し,渦相関法で運動量フラックスを測定した。同時に,小型風杯風速計で,風速の鉛直分布を測定した。それらの測定値から得られたフラックスの鉛直勾配を用いて風による荷重を推定した。 これらの結果から,(1)森林外での風による運動量輸送は,高さによらずほぼ一定であり,キャノピ-上部で,ほとんど吸収されること,(2)キャノピ-と地表の間の空間にも風速のピークが見られ,キャノピ-下部における運動量フラックスの出入りを無視できないこと,(3)運動量フラックスは水平方向の測定位置に対する依存性が低いことを明らかにした。しかし,観測期間中,風が弱い事が多く当初予定した抵抗係数の算出については,来年度以降の課題とした。この推定法を確立することは,容易な風による荷重の推定法を提供できるばかりではなく,森林キャノピ-の抵抗係数も容易に決定できるようになるので,抵抗係数を用いた簡便な風による荷重推定法の基礎データの集積が可能となり,森林防災に寄与できると考える。
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