研究課題
本研究では被災者の精神健康とその精神的回復過程、精神的問題の治療法、被災者を精神的に支援するボランティアの育成プログラム等に焦点をあてながら、以下の問題を具体的に検討することを目的とした。その結果、平成9年度には以下のような結果が得られた。1.北海道南西沖地震及び阪神・淡路大震災による被災者の精神健康については実態調査を実施し、調査結果の整理、コンピュータへのデータの入力等を行った。そして、北海道南西沖地震から4年3カ月後及び阪神・淡路大震災から2年3カ月後の被災者の精神健康状態を分析し、精神的に危機的状態にあるハイリスク者の判定や被災者の精神的回復過程に寄与する要因について統計学的な検討を試みている。2.災害を体験した被災者や事件の被害者、さらに災害現場で支援活動をするスタッフがさらされる急性ストレス障害及び災害後に発症する可能性の高いPTSD(Post Traumatic Stress Disorder)を予防するためにはディブリーフィング(debriefing)が有効であることが指摘されている。このディブリーフィングを効果的に実施するための方法論について検討を進めている。3.災害による精神的問題の治療法に関しては国内及び国外等の豊富な研究資料を精力的に収集し、日本語への翻訳や重要な治療成果について整理する作業を進めているところであり、被災者のPTDSの特徴やその治療法の有効性について詳細に吟味している。4.被災者を精神的に支援するボランティアの育成プログラムについては被災者の心のケア活動に参加した人々がそのボランティア活動をどのように捉え、自己評価しているかを分析しながら、被災者の心のケアに関する研修プログラムの内容の充実について検討している。