研究課題/領域番号 |
09480082
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
藤森 立男 横浜国立大学, 経営学部, 助教授 (00192732)
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研究分担者 |
西澤 哲 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 助教授 (90277658)
富永 良喜 兵庫教育大学, 発達心理臨床研究センター, 教授 (50164033)
小西 聖子 武蔵野女子大学, 人間関係学部, 教授 (30251557)
岡田 幸之 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (40282769)
藤森 和美 聖マリアンナ医学研究所, カウンセリング部, 部長
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キーワード | 自然災害 / 被災者の精神健康 / GHQ28 / 心のケア / 生活復興対策 |
研究概要 |
本研究では、コミュニティ全体を崩壊させ、生命の危機や家族の死をともなう深刻な喪失体験をもたらす中心的災害に襲われた被災者の精神健康度を調べるために、日本人向けに標準化されたGHQ28を使用し、6年2ヵ月が経過した時点で実態調査を行うことにより、災害の精神健康への影響について意見の一致をみていない問題を検討することを目的とした。本研究では見解を大きく分ける要因として、(1)災害がコミュニティに及ぼす影響の範囲と(2)研究の対象者の違いを指摘し、「コミュニティ全体を崩壊させ、生命の危機や家族の死をともなう深刻な喪失体験をもたらす中心的災害は、被災者の精神健康に長期的影響を及ぼし、長期間にわたって精神的症状の有訴率が高い」との仮説を検討した。 分析の結果、精神障害を有するおそれのある事例であると判定する閾値点を6点以上とする中川・大坊(1985)の判定基準では、北海道南西沖地震から6年2ヵ月が経過した時点では54.6%となっていた。これに対して、福西(1990)の研究によれば、ハイリスク者の判別には7点以上が有効であることを指摘している。この判定基準にしたがってハイリスク者を算出すると、50.6%がハイリスク者であった。このように、ハイリスク者の比率はいずれの判定基準においても50%を超えており、日本人の一般成人を対象とするGHQ28に関する調査結果(中川・大坊,1985:福西,1990)の14%を考慮すると、北海道南西沖地震による被災者のハイリスク者の出現率は6年2ヵ月後も一般成人の数値を大きく上回っていた。この6年2ヵ月後の結果は、本研究の仮説を支持していると言える。 以上の結果は、北海道南西沖地震から6年2ヵ月が経過した時点においても災害が被災者の精神健康に長期的な悪影響を及ぼしていることを示しており、被災地域の再建に対して有効に寄与する生活復興対策の充実があらためて求められていると考える。
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