研究概要 |
本研究では,来るべき東南海・南海地震津波による被災シナリオを中心として,現在の津波研究が抱える問題点と,必要な取り組みを明らかにした.これらの津波による都市型災害は,三陸津波でも発生が懸念される.最初に,人的被害を軽減するためには,地震直後にすぐに自主避難することである.自主避難するには,事前に,つぎのような津波の危険性を正確に理解しておく必要がある.1)自分の住んでいるところにどの程度の大きさの津波がやってきて,わが家は大丈夫なのかどうか,2)地震の後,どれくらいで津波がやってくるのか,3)津波の来襲はどれくらいの時間,継続するのか,及びわがまちの津波被害は最悪の場合,どの程度になるのか,である.東南海・南海地震の発生時間差が卓越周期の整数倍の場合,両津波の重合が起こって津波の高さが非常に大きくなる危険性も見いだされた.わが国は1960年代に激しい都市化に見舞われた.そして,都市の構造が変化し,これに呼応して災害対策を立てなければならないが,大変遅れている.被災シナリオに沿った長期的な対策を立てることが,つぎのような情報改善と日常的なコミュニケーションを通じて被害軽減に寄与する.1)予想以上の津波の可能性,2)水門・防潮扉からの浸水,3)港湾・船舶の被害,4)要避難者,である.さらに,南海地震津波を可視化したところ,地震発生から約5から7時間後に,紀伊水道と豊後水道を経て瀬戸内海に東西方向から別々に伝播した津波が重なり,思わぬ海域で波高が増大することが見いだせた.この結果は,1854年安政南海道地震津波の被害に関する古文書の記述と一致した.
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