研究概要 |
津波などの市街地氾濫に伴う地下空間の氾濫計算法として,越流タンクモデルを提案した.従来のモデルとの比較計算を行った結果,その妥当性が証明された.簡便な手法ながら,防災の観点から,地下空間の氾濫流の挙動を捉えることができる.また,有限要素法による市街地氾濫計算を行う際,メッシュ構成と,計算時間間隔に注意が必要であり,有限要素メッシュへの地盤標高補間方法は今後の検討課題であることがわかった. また,1854年の南海地震津波の計算結果により,現地市街地において,以下の特性が示された.1)市街地への氾濫流量の約1/4が地下空間へ流入する.2)津波氾濫シミュレーション結果から,津波の河川遡上によって,市街地が氾濫し,地下空間が浸水するというシナリオを提示した.3)地下鉄網へ排水を行った場合,直結するコンコース部の水深は減少するが,他の地下街への効果は余り見られない.4)止水板の取り付けは,その出入口が直結する地下空間への流入量を減少させる効果があるが,逆に市街地の浸水深や,他の地下空間における浸水深を増加させることになる.どこを守るのか,何を守るのか,ということを認識した上で対策を行うべきである.5)地下空間水防災には各種トレードオフの問題が存在することを明らかにした.これに対する見解を,行政・管理者・住民が共有しておくことが減災への第一歩である.また,広域危機管理の問題として,複数の県が被災した伊勢湾台風高潮を取り上げ,そこでの救援活動における調整と関係機関間と住民の間での情報共有化とが最も重要となることが見出された.広域津波の問題については,とくに瀬戸内海の赤穂市の波高が高くなる結果が数値シミュレーションで見出されたが,これは江戸時代の宝永および安政の南海地震津波による被害とよく一致することがわかった.
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