研究概要 |
大阪市北区梅田地区を対象に,M8.4の南海地震を想定し,地震動によって堤防が沈下し,その部分から津波が市街地に流入したという条件の下でシミュレーションを行った.さらに,淀川の洪水氾濫と同時生起も想定して実施した.市街地氾濫計算は有限要素法を,地下空間部分の浸水計算は越流タンクモデルを適用した.その結果,氾濫水の市街地氾濫は面的に広がるために浸水深の距離的減少が大きいために,津波の場合が破堤点と地下空間の距離が短く,地下空間への浸水量は洪水の氾濫の場合よりも大きくなることがわかった.また,洪水と津波の同時氾濫では,浸水深が両者を単純に加えた結果となり,非線形の相互作用が現れないことが明らかになった.つぎに,高潮氾濫の場合には路上浸水が始まり,床下浸水,床上浸水,地下空間浸水というような時系列によって被害が段階的に進行し,それぞれに対して防災対策が存在することを明らかにした.一方,津波氾濫を想定した場合,まず地震が起こることが先行するから,二次災害対策として津波防災が存在することがわかった.したがって,地震とのセットで防災対策を立てる必要があり,しかも高潮に比べて時間的余裕があまりないので,選択的に対策を進めざるを得ないことを指摘した.さらに,津波,高潮災害の危機管理上,最大の問題は計画高潮や想定津波を超える超過外力に対してどのような考え方を採用するかということである.そこで,受容リスク(acceptable risk)と受忍リスク(tolerable risk)を新しく定義して対処する方法が考えられる.前者は物的被害が不連続に大きくなることに対応し,後者は人的被害の出方が変化して未曾有になる場合である.高潮や津波災害では,前者は床下浸水から床上浸水に移行する場合に対応し,後者は床上浸水から家屋の流失,全壊に移行する場合であることを指摘した.
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