研究概要 |
1 現地観測 平成9年度および10年度には,土壌凍結の気象条件の異なるいくつかの崩壊裸地で現地観測を実施した。観測斜面としては,1996年から斜面水文調査をおこなっている住吉川支流の西山谷上流の崩壊地を実験斜面に選定した。本年度は,斜面水文調査の対象を,西山谷の東側の,住吉山手9丁目地先の小流域に移設したので,土壌凍結に関する観測もこの小流域に移設した。この小流域内の低い屋根の近傍に,1995年の兵庫県南部地震の時に,斜面がブロック化しながら最大2mの変位を示し,ブロックの間に断層状の段差有する微地形が出現していることを発見した。このような斜面は,今後不安定化する危険性が高いので,ここで地中温度のモニタリングを開始した。観測機器は購入済みのものを用いた。平成11年12月から平成12年3月までの冬季の観測データは,林内地であっても,地形的段差によって裸地化した部分では土壌凍結が深部まで及ぶことを示している。 2 研究成果の全体的な総括 平成9年度は現地観測の準備,実施,およびデータ解析を行った。平成10年度には,それに加えて,これまでに滋賀県田上山地および比良山地でおこなっていた水文地形学的研究の中で,観測データの分析が不十分であった土壌の凍結・融解が斜面安定に及ぼす影響について,見直し作業をおこない,平成10年6月におこなわれた陸水物理研究会の田上山地現地巡検の際のガイドブックの一部として成果発表した。平成11年度には,兵庫県南部地震による斜面崩壊について,本研究での現地観測を含めて,土壌凍結や植生が斜面崩壊に及ぼした影響について分析し,学会誌に論文発表した。
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