研究概要 |
本研究の課題は,電子サイクロトロン周波数に共鳴する強力な電場が存在する場合の,プラズマの応答を,サイクロトロン共鳴の逆過程で再放射(または散乱)される波動の検出を通じて解析しようとするものである.電子の速度分布が平衡状態から大きくはずれる場合もあるから,電子温度診断に用いられている電子サイクロトロン放射計測とは異なる. GAMMA10装置のプラグ部にある1テラス近くの不均一磁場中に,最大150kWの28GHzマイクロ波を電子サイクロトロン波として集光することにより電子化熱を行う.プラズマからの放射は,本研究のために設計した可動アンテナを用いて,受信する位置・角度・偏波面を変えて計測した.波動解析は受信波を分波したあと,ヘテロダイン方式により,26.5^〜30GHz帯と54^〜58GHz帯で同時にスペクトル分析するシステムを構築した.1回ごとの周波数分析幅は最大1.8GHzである.これまでに得られた知見は次の通りである. (1)強い波動が28.4GHzを中心に比較的狭い半値幅0.1GHzで観測される.この周波数は単色波の加熱周波数とは異なる.またプラズマ密度が極端に低いと観測されず,密度がある程度以上あれば周波数はほぼ同じである. (2)この周波数スペクトルは受信アンテナの位置には依存しない.また方向依存性も強くないことから,ある空間域で選択的に放射されており,他の領域からの放射に比べて圧倒的に強力なものである可能性が高い. (3)この波動の強度は加熱波を照射している時間帯でのみ強く,加熱波を停止すると数桁低下する.このことから加熱波によって共鳴が加速された電子から集団的に誘導放射される波動である可能性が高い.因みに,電子の熱運動によるサイクロトロン放射強度に比べると,控えめに見積っても2桁以上の強さである. (4)第2高調波帯にて計測すると56.4GHz近くに同程度に狭いスペクトルが観測される.28GHz帯と同様に極めて狭い幅であり,Doppler幅に対応させると共鳴エネルギー幅は10eV程度と異常に狭い. 以上の如く,当初予測したように,共鳴加熱波によって誘導される波の検出に成功した可能性が高い.従来このような見地からの実験は行われていないので,新しい結果といえる.次年度はきめ細かな観測と理論解析を組合わせて物理的に掘下げた解析を行う.
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