研究概要 |
本年度は,(1)単塔型深冷壁熱拡散塔による窒素15濃縮特性の解析,および(2)単塔型疑似深冷壁熱拡散塔による窒素15濃縮実験を行った.(1)では,これまで水素同位体を対象として開発してきた解析手法を窒素同位体に適用できるように拡張した.すなわち,熱拡散塔内の軸対称自然対流に関して,^<14>N^<14>N分子,^<14>N^<15>N分子,^<15>N^<15>N分子の3成分に対するモル分率を密度,半径方向速度,軸方向速度および温度とともに未知数として,6つの変化方程式を連立させ,これらの有限差分表現をNewton法で解く数値計算コードを作成した.ここで,必要となる窒素同位体の分子量,粘性係数,熱伝導度,定積熱容量,拡散係数,熱拡散ファクタを文献値を参考にして組込んだ.熱拡散ファクタについては,Lenard-Jonesポテンシャルに基づき,Monchickらの非明示的表現に近似を施して得られる概略評価式の計算結果を温度と成分存在率に対してフィッティングしたものを用いた.また,他の同位体と比較するため,アルゴン同位体に関しても同様の数値計算コードを作成した.(2)では,前項で定量化した単塔型深冷壁熱拡散塔の分離性能を最大化した条件を参考として,液体窒素冷却の代りに超低温循環恒温槽を用いて循環冷媒により,外壁を冷却する熱線式熱拡散塔を作製し,外壁温度を0,-40,-55℃,熱線温度を800℃として,(1)項の計算結果との比較を行った.また,アルゴンに関しては,外壁温度を-40℃,熱線温度を670℃として,(1)項の計算結果との比較を行った.実験において,窒素同位体およびアルゴンの同位対比の分析には,常温気体導入装置および二重収束型質量分析計(日立製作所M-80)を用いた.この結果,アルゴンに関しては,開発した計算コードによる分離係数の解析結果と実験結果が良く一致したが,窒素に関しては,実験結果の全分離係数(αβ)が開発した計算コードによる解析結果より,αβ-1の値で約70%ほど小さくなる結果が得られた.
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