研究概要 |
本研究課題では,高速領域,つまり電子的衝突過程が支配する速度領域で、重イオンを照射した固体から放出するクラスター粒子の電荷分布、質量分布、放出初期エネルギー分布、放出角度分布を、入射イオン種とターゲット化学種を系統的に変えて測定し、電子的スパッタリングの基本的な機構の解明を行う。 (1)MeVエネルギー領域のSiおよびCuをA1,Si,A1_2O_3などのターゲットに照射し、放出する単原子多価イオンならびにクラスターイオンを飛行時間分析法により測定し、質量分布ならびに2次イオンの放出初期エネルギー分布を求めた。放出初期エネルギー分布の精度は0.1eVである。 (2)不導体ターゲットの場合、非常に大きなクラスターイオンが生成されるのに対し、半導体あるいは伝導体の場合は単原子イオンのみでクラスターイオンはほとんど生成されない。 (3)ターゲットの伝導性に依らず、単原子イオンの初期エネルギーはイオンの価数にほぼ比例する。また、半導体あるいは伝導体ターゲットの場合、不導体に比べ、初期エネルギー値は非常に高い。 (4)不導体ターゲットの場合、発生するクラスターイオンの初期エネルギーは原子状イオンに比べ非常に低い。 (5)得られた2次イオンの放出初期エネルギー分布を検討し、電子的スパッタリングの生成機構に力点をおいてまとめ公表した。
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