研究概要 |
新しい電気化学的な方法で低コストな多結晶シリコン薄膜を製造し、これを用いて高効率・低コストな新型太陽電池を作製することを目的に研究を行った。昨年度に引き続き、有機系の三塩化アルミニウム・塩化ノルマルブチルピリジニウム(BPC)混合溶融塩を用い、四塩化ケイ素の電気化学的還元による多結晶シリコン薄膜の析出を検討した。有機系の溶融塩は四塩化ケイ素をよく溶解するが、100℃以下の低温でしか使用できないため、析出Siがアモルファスになり易いという欠点があり、これを克服することが難しいことが分かった。そこで、再度、塩化リチウム・塩化カリウム溶融塩を用いることにし、現在、精密な回転速度で電極を回転できるセルを製作中である。Siのエピタキシャル成長に関連して、昨年度見出したハロゲン終端結合の生成によるSi電極のフラットバンド電位のシフトについて、原子レベルで平坦化した単結晶Siを用いて詳しい検討を行った。HFエッチしたSi(111)結晶表面はほとんど水素終端されているが、表面ステップにSi一OHが多く存在し、このOHがX(X:ハロゲン)に置換して、Si-X結合が生成することが明らかになった。また、ハロゲン化水素酸中では表面Si-H結合の赤外バンドが急激に減衰することも見出した。半導体表面に金属超微粒子をまばらに施すことを特長とする新型太陽電池の固体化も検討した。白金超微粒子を施したn型Si表面にヨウ化第一銅膜(約2μm厚)を真空蒸着し、これに透明導伝膜(ITO)を圧着させることにより、"n-Si/Pt,SiO_2/p-CuI/ITO"接合の太陽電池を作製し、開回路光電圧0.50V,変換効率3.3%を得た。これにより、この接合が基本的に太陽電池に使用できることが分かった。効率はまだ低いが、これはp-CuI薄膜の作製条件の適正化による克服できる見込みである。
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