研究概要 |
高効率・低コストな新型の太陽電池の開発を目標に、良質な多結晶シリコン薄膜の製造法の確立を目指して研究を行った。昨年度に引き続き、四塩化ケイ素か塩化リチウム・塩化カリウム溶融塩に溶解しないため析出物(薄膜)が不均一になるという問題を解決するため、種々の検計を行った。この結果、電極を回転する方式で陰極基板の全域に薄膜が形成できることが明らかになった。この研究に平行して、多結晶シリコン薄膜の利用に適した高性能の新しい接合法の開拓、シリコン表面上の表面準位の分布と低減、シリコン表面終端結合の化学的変換、シリコン表面のナノ加工に関する研究も行った。シリコンの電析機構とその制御法を明らかにするために、原子レベルで平坦なシリコン単結晶表面上のSi-HやSi-X(X=ハロゲン)結合の反応性を調べた。この結果、水素終端シリコン表面をハロゲン化水素酸中に浸すと、微量の酸化剤が溶液中に存在する場合には、Si-X終端結合が生成し、これによってシリコン電極のフラットバンド電位がシフトすることが明らかになった。さらに、ヨウ化水素酸に浸した場合には、配列したヨウ素のナノロッドが形成するという興味深い結果を得た。新しい接合法の開発に関しては、白金超微粒子を施したn型Si表面を用いる新型固体太陽電池."n-Si/Pt,SiO_2/p-CuI/ITO"が良好な特性を示し、新しい接合法として有望であることが明らかになった。特に、金属微粒子をうけない場合に、開回路光電圧(Voc)0.617Vという理論値に近い大きい値が得られることが明らかになった。金属微粒子をナノメートルのサイズで大きさ、分布をよく制御してつける方法についても多くの検討を行い、この過程で、原子レベルで平坦化されたシリコン単結晶上にニッケルを電着すると、配向したニッケルのナノロッドが形成されるという興味ある結果を得た。
|