研究課題/領域番号 |
09480110
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉田 直亮 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (00127317)
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研究分担者 |
森下 和功 九州大学, 応用力学研究所, 助手 (80282581)
渡邉 英雄 九州大学, 応用力学研究所, 助教授 (90212323)
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キーワード | 核融合炉材料 / 照射損傷 / ボイドスエリング / ステンレス鋼 / バナジウム合金 |
研究概要 |
本年度は温度の自動変動制御が可能な試料ホルダーを作成し、Fe-16Cr-17Ni-0.1P合金およびバナジウム合金の重イオン照射実験を行い、損傷組織を電子顕微鏡で観察することによって照射損傷に及ぼす試料温度変動の効果について研究した。なお、撮影した電子顕微鏡写真を本研究費で購入したパーソナルコンピュータおよびプリントサーバを用いて迅速にかつ安価にプリントしデータ解析の効率を格段に向上させることができた。 Fe-16Cr-17Ni-0.1P合金はP(リン)を微量添加すると重イオン照射の場合673K以下の低温では高密度の転位ループが、また773K以上の高温ではFe_2P析出物がボイドスエリングを抑制し耐照射性が著しく改善される。本研究では照射中試料温度が低温(673K)から高温(923K)に変動した場合の損傷組織の形成過程について調べた。照射温度を923Kに固定した場合には、低密度の粗大なFe_2P析出物が形成され150dpaの強照射でもボイドは観察されなかった。これに対し、673Kで1dpa照射した後923Kで照射を継続した場合には、ボイド抑制作用のある転位ループと析出物の形成が抑えられ、ボイド抑制効果は50dpaで消失することがわかった。従来のほとんどすべての照射実験は温度一定条件で行われそれをもとに核融合炉材料や原子炉材料が開発されてきた。温度変動が上述のような大きな影響をもたらすことは極めて重大で、照射研究の在り方について再考する必要が有ることを示唆している。 バナジウム合金については研究に着手したばかりであるが、この合金においても温度変動により照射誘起析出現象が大きく変わることが明らかになってきている。来年度以降は繰り返し温度変動など核融合炉の温度環境により近い条件での照射効果について研究を進める。
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