研究概要 |
本年度は昨年購入した照射温度の自動変動試料加熱ホルダーを用いてバナジウム合金の重イオン照射実験を実施し、損傷組織の電子顕微鏡観察及び超微小押し込み試験機を用いた硬さの測定を行うことにより、照射温度変動効果について研究した。 バナジウム及びその合金は低放射化特性及びスエリング特性に極めて良好な材料であるが、中性子照射による実験等から延性の低下が危惧されている。本研究では、純V,V-5Cr,V-5Ti,V-4Cr-4Tiの候補材料に対して(1)473Kで0.25dpa照射(2)473Kで0.25dpa照射後、873Kで30分間の焼鈍(3)473Kで0.25dpa照射後、873Kで0.5dpa照射(4)873Kで0.75dpa照射を行った結果、Tiの添加の有無により内部組織及び硬さ試験で結果が大きく異なることが分かった。昨年度実施したステンレス鋼での結果と同様に低温照射後の高温照射によりループの消失がTi非添加材では顕著であるが、Tiを添加した材料(V-5Ti,V-4Cr-4Ti)では(2)及び(3)照射により高密度のチタン酸化物が形成されており、温度変動照射後のループ数密度の減少は非添加材に比べて小さい。これらの試料では、押し込み試験による硬度の上昇が顕著でこれは低温照射後の高温での焼鈍及び照射で形成される微小酸化物の形成で説明された。中性子照射実験で指摘されている延性の低下はこれらの微小酸化物が密接に影響しているとも考えられ、来年度さらに実験及び考察をから核融合炉の温度変動効果について研究を進め、本研究の総括を行う。
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