グリーンランド氷床コアから得られる気候・環境情報の時間分解能が高く、古気候・古環境復元の基本情報として使われている。しかしながら、底部層コアの分解能は、氷の変形による層の薄化や褶曲化により上部層で一年の季節変動の精度であったものが20%以下にまで落ち込んでいる。また、南極内陸部からのコアの分解能は、その地域の年涵養量が小さいために悪く、北極グリーンランドコアとの比較研究を同じ時間精度で行うには困難がある。本研究は、氷床コアから得られる気候・環境情報の信頼度高度化に関連して、これらの問題を解決するために遂行された。 先ず、氷の変形による褶曲化について深層部のCloudy bandを含むコア試料の変形実験を行い、層の褶曲化の観察を行った。その結果、不純物が多く含まれ、結晶粒径が小さく、方位分布も異なるCloudy bandの変形は他と比べて極端に異なることはなかった。実際のコアに見られる褶曲構造の再現は、コアサイズの試料での実験ではその再現は容易ではなく、大スケールの実験が必要である。二番目の問題である南極内陸部コアについては、浅層部の堆積層位厚の測定と深部のクラスレート・ハイドレートの数密度層位を測定し、その層位厚を求めた。その結果、深さ40m以下の堆積層位厚、及びクラスレート・ハイドレートの数密度層位厚は、D-Jモデルで計算されて年涵養量厚さと良い一致を示した。これは、表層部における雪変態過程で年層境界が選択的に保存される確率が高くことを示し、そして、雪の空隙が気泡化し、その気泡分布の反映としてのクラスレート・ハイドレートの数密度が、また年層を保存している結果であり、この結果は、新たな気候・環境情報の信頼度高度化に貢献するものである。
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