研究概要 |
短寿命放射性核種であるP-32,S-35,Be-7,Th-234、Pb-210の測定と限外ろ過による有機物の分子量分画、サイズ別のフィルターを用いた有機物の分別を組み合わせて,天然水中の有機物動態の時間スケールを明らかにするためのマルチトレーサー法を確立する。 海水および湖沼水からの放射性物質測定のための有機物分離法の確立: 天然水中の短寿命放射性核種であるP-32(半減期λ:14.28日)、Be-7(53.6日)、Po-210(138日)、Th-234(24.1日)およびPb-210(20.4年)は極めて微量にしか存在しない。ましてや、溶存有機物の部分だけを集めようとすると、さらに微量になる。そのため、大量の海水あるいは湖沼水を必要とする。天然水の量としては1000から3000l程度が必要である。これら大量の海水から有機物を効率的に濃縮する方法として、大量にできる連続限外ろ過法、および異なるサイズの有機物を濃縮するためのセルロースフィルターによるろ過法を確立した。 トレーサーに使用するための放射性核種を自然試料(土壌あるいは生物試料)から迅速多量に天然放射性核種を濃縮分離する方法の確立: 迅速分離濃縮方法を放射性物質が濃縮している土壌あるいは生物試料を電気炉で加熱分解し、鉱酸で抽出する方法を検討し、分離濃縮する方法を確立した. 短寿命放射性核種の低パッツクグランド計測条件と核種測定条件の検討: 放射性核種の測定は静岡大学放射化学研究施設のβ線、γ線(Ge(Li))測定器により、また金沢大學低レベル放射能測定施設のα線、β線(Si detectorあるいはピコぺータ、γ線測定器により測定した。これらの核種の測定条件を測定試料の化合物の化学形、試料測定容器、計数効率等について検討し、特にP-32については0.03cpmの極低バックグランドでの測定を可能のにした. 実試料を用いたマルチ核種相互の関係の検討: 駿河湾および琵琶湖において、有機物粒子およびプランクトンを捕集し、Be-7,P-32,Th-234,U-235,Pb-210を測定し、これらの核種の間の有機物粒子への吸着等の挙動について検討し、Th-234とPb-210は極めて類似の、P-32とBe-7はそれぞれ、異なる挙動の可能性が示唆された。
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