研究概要 |
大気中に存在する水が相変化するとき,特に水が凍結するとき,水蒸気が昇華するとき,および水が蒸発するときに,水に含まれていた汚染物質または,水(氷)がつくことによる粒子や気体成分の動態について研究を行った。水の凍結時では,化学反応が促進されることが知られていて,この機構を検討した結果,氷粒界に閉じ込められた溶液中に極めて高濃度に濃縮されるためであることが、これまでの研究でわかってきた。そこで、その濃縮を確かめるために,干渉計を用いて研究する方法について検討を行った。そして,これまで調べてきた亜硝酸と溶存酸素の反応と,反応によりモル数の変化する硫化物イオンと過酸化水素の反応について実験条件を調べた。干渉計による観察は近々行う予定で進めている。また,水蒸気の昇華による揮発性溶存物資の揮散の研究では,水の凍結による揮散よりも,揮散量が著しく増加することを見出した。この結果については,現在論文を作成中である。また,揮散を支配する要因については,共存するイオンの種類と濃度に依存する傾向があることから,さらに詳しく研究を進めて揮散の機構を明らかにする必要がある。水の蒸発による汚染物質の動態の研究では,室内実験により,水の蒸発に伴う弱酸成分や塩化物イオンの揮散が,溶液のpHではなく,共存する不揮発性のイオン成分のの存在比に依存することを見出した。また,その揮散は,水がほとんどなくなる直前に起こることを見出した。現在,湿度との関係について調べている。さらに,実環境で水の蒸発が起こることが明らかな露の採取を行い,乾燥に伴う溶存物質の揮散について調べた。その結果,弱酸成分のほとんどが乾燥により揮散することが確認できた。特に亜硝酸の揮散は大気光化学への影響が大きいと考えられ,今後,亜硝酸の動態についてさらに詳しく研究する予定である。
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