1997年度 1) 露の採取と分析から露水のpH値は雨や霧の値に比べて高く、露水中では亜硝酸、アンモニウムイオンやギ酸や酢酸といったカルボン酸の濃度が高いことを見出した。 2) アンモニウムの共存下では露の乾燥過程において亜硝酸は窒素分子に還元され水溶液相から逃散することを見出した。 1998年度 1) 前年度の結果を受けて、露のモデルとして室内冷房機のドレイン水を集めて分析を行ったところ、亜硝酸、アンモニウム、カルボン酸イオン類の濃度が高く、pH値も相対的に高い事がわかった。 2) 曇天や夜間の自然環境大気中および室内空気中では、窒素酸化物と水の平衡で従来存在すると考えられていた以上の亜硝酸濃度が存在することが分かった。 3) 亜硝酸、硫酸、アンモニウム、ナトリウムの各イオンを含むモデル露系の乾燥実験から、亜硝酸の窒素分子への還元過程に関係する機構として、露中の各イオンの挙動に関して以下のことを明らかにした。 a) 水の蒸発に伴い、まず硫酸イオンとナトリウムイオンの結合が優先し、硫酸ナトリウムの固体が析出する。 b) ナトリウムが硫酸に対して過剰に存在する場合、次に亜硝酸イオンとナトリウムが結合して、亜硝酸ナトリウムが固体として析出する。 c) ナトリウムと反応できなかった亜硝酸イオンは水の蒸発が進むと、露水中でアンモニウムとの濃縮溶液を形成し、一部が反応することにより窒素分子として水溶液相から逃散して行く。 4) 溶液の凍結により過酸化水素による硫化物の酸化反応が促進された。この硫化物イオン酸化は、チオ硫酸イオン、トリチオン酸イオン、テトラチオン酸イオンと逐次的に酸化が進み、最終的に硫酸イオンまで酸化される。チオ硫酸イオンの酸化は凍結が完了した後も進行するが、中開成生物であるトリチオン酸イオン等の不安定物質の酸化は凍結完了後進行しないことが明らかとなった。
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