研究概要 |
1. カドミウム(Cd)環境汚染による健康影響,とくに尿細管障害の進行・悪化の有無,有病率・発生率の変化を知るために,富山県神通川流域Cd環境汚染地域住民を対象に,7年後の1999年に追跡の調査を行った.対象はCd汚染地域である婦負郡婦中町11集落に居住し,1992年時住民台帳に登録されていた54〜68歳の男性全住民116人である.対照は,非汚染地域である同町1集落の同年齢の男性全住民30人とした.早朝尿を採取し,尿中β_2-ミクログロブリン(Uβ_2M),NAG(UNAG),グルコース(UGlu)ほかを測定した.追跡できた住民はCd汚染地区93人,対照地区26人であった. 汚染地域住民のUβ_2MとUGluは,対照地区より有意に高値であった.1992年時NAG10U/gCr.以上の高値を示した6人は,7年後の1999年にも高値を示した.土壌汚染改良が進んでいるが,住民の尿細管障害の不可逆性が示唆された. 2. 踵骨超音波骨評価装置(AOS-100, アロカ)による骨量評価方法と中手骨X線写真を用いるDigital image processing(DIP)法を比較し,さらに尿・血清中の骨代謝マーカーとの関連から両法による骨量測定の意義を検討した.富山県神通川流域Cd汚染地域において,近位尿細管機能異常を呈する女性47名(68〜83歳,平均73歳)を対象に,踵骨超音波骨評価法により音速(SOS),骨透過指標(TI)およびSOSの自乗にTIを乗じて求める音響的骨評価値(OSI)とDIP法により右第2中手骨密度(BMD)と骨皮質化(MCI)を求めたが,踵骨の超音波法による評価値と中手骨DIP法測定値との間に相関はみられなかった,骨代謝マーカーはDIP法のBMDと相関がみられ,踵骨量評価値とは相関しなかった.したがって,骨代謝の動態は中手骨量が踵骨量に較べてより反映していた.
|