研究分担者 |
大塚 攻 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (00176934)
星川 和夫 島根大学, 生物資源科学部, 助教授 (10229172)
大谷 修司 島根大学, 教育学部, 助教授 (50185295)
高安 克己 島根大学, 汽水域研究センター, 教授 (00127490)
國井 秀伸 島根大学, 汽水域研究センター, 助教授 (70161651)
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研究概要 |
本研究は、生物多様性の保全の観点から、干拓が計画されている中海本庄工区の環境影響評価を行うための基礎データを得ることを目的とする。研究初年度として、まず、工区の水質や種々の生物相の現況把握調査を遂行した。成果の概要は以下の通りである。 工区内の水質は、透明度、栄養塩(N,P)濃度およびクロロフィルa濃度等、代表的な水質項目からみて、中海湖心(中海の平均的水質を示す)よりも良好であることが分かった。堤防によって仕切られ、閉鎖性が強いにもかかわらず、工区の水質が良好な状態にあるのは、集水域からの流入負荷が小さいことが重要な要因と考えられた。なお、クロロフィルの測定には購入備品のクロロフィル測定装置を用いた。 工区内の動植物プランクトンは、汽水域や内湾に出現する種類が多く、優占種は、植物プランクトンが珪藻Skeletonema costatum,Cyclotella類、渦鞭毛藻Prorocentrum minimumなどであり、動物プランクトンは汽水性のAcartia hudsonica,A.sinjiensis,Eurytemora pacifica,Sinocalanus tenellus,強内湾性のOithona davisaeの5種であった。 海草では緑藻6種、褐藻3種、紅藻11種、種子植物2種の計22種を確認し、優占種は緑藻アオノリ類と褐藻ウミトラオであった。また、工区内でRDB記載種の危急種である汽水産の水草カワツルモが確認された。 ベントスは主に貝類の組成から6つの群集に分けられ、魚類は汽水域に生息する種類が多く、70種が確認された。海鳥は冬季に4万羽が飛来し、RDBに記載種のカンムリカイツブリ、コハクチョウ、ミサゴなどが確認された。また、大根島の洞窟からは島根県の要保護種のイワタメクロチビゴミムシが確認された。 以上のように、未だ調査半ばではあるが、本庄工区がRDB記載種も生息する生物相が豊かな水域であることを示す興味深い結果を得た。
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