研究課題/領域番号 |
09480123
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
神谷 研二 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (60116564)
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研究分担者 |
丹羽 太貫 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (80093293)
隅井 雅晴 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助手 (60284220)
宮川 清 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (40200133)
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キーワード | マウス肝癌 / VL30 / CAP / LOH / 肝癌細胞株 / 放射線誘発肝癌 / レトロトランスポゾン |
研究概要 |
B6C3F1マウスに自然発生、又は放射線誘発した50個の肝癌より142株の肝癌細胞株を樹立した。これら肝癌より樹立した肝癌細胞株には、高頻度に4番染色体のLOHが認められた。しかし、これら細胞株のLOH領域は広範囲に及び、LOHの最小欠失領域を決めることはできなかった。各細胞株での4番染色体におけるLOHの存在と、癌の悪性度との相関を検討した。同系ラットへの可移植能、または軟寒天培地でのコロニー形成能は、C3H alleleの残存する細胞株の方が、C57BL alleleの残存する細胞株より高く、LOHを有さない細胞株では低いものであった。このように、4番染色体でのgenotypeと、癌の悪性度が相関したため、各細胞株のgenotypeと軟寒天培地でのコロニー形成能とを指標として、differential display法による解析を行った。その結果、軟寒天培地でコロニー形成能を有する肝癌細胞株に強発現するmRNAを2種類同定した。そのcDNAをクローニングし、塩基配列を決定した結果、1つはレトロトランスポゾンである5.6kbのVL30と、他は2.6kbのadenylyl cyclase-associated protein(CAP)であった。このVL30の発現、及び発現量はコロニー形成能と強い相関性が認められた。VL30の臓器での発現は、副腎、卵巣及び精巣では非常に強く、肺、腎臓、心臓及び乳腺では弱く、その他の臓器では、殆ど認められなかった。VL30の発現はLTRにより制御されていることから、現在このLTRに結合し、その転写を高めるような転写因子を検索中である。CAPは、3つのドメインを有し、N末端はアデニル酸シクラーゼ結合領域を、C末端はアクチン結合領域を有する。中間部にポリプロリン領域があり、SH3ドメインが結合する。この様に、CAPはシグナル伝達系と細胞骨格系に関与するドメインを有しており、その機能異常は発癌に何らかの影響を与えることが推定される。マウス4番染色体で最も高頻度にLOHが認められるD4Mit220領域は、ヒト染色体の1p32-36領域に相当する。この領域にLOHを有する肝癌細胞株にヒト1番染色体の移入を行い、軟寒天培地でのコロニー形成能と、ヌードマウスへの可移植能を指標にして、ヒト1番染色体による癌形質の抑制を検討した。現在までにヒト1番染色体を移入した6株の肝癌細胞株を分離したが、癌形質の抑制には成功してない。
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