研究概要 |
リンパ腫発生に関わる遺伝子を明らかにするため、放射線誘発リンパ腫のゲノムの変化を調べた。詳細な遺伝子座の解析を行うため、豊富な多型マイクロサテライトマーカーが得られるドメスティクス亜種とモロシヌス亜種との交配マウス、(BALB/cHeA x MSM/Ms)F1を用いた。X線分割照射を行い、発生した胸腺リンパ腫についてPCRでヘテロ接合性の消失(LOH)を検索した。発がんに関わる遺伝子を同定するために、まず高頻度のLOHが観察される領域を絞り込んだ。結果の概要は以下のとおりである。 1.第12染色体において著しく高い頻度のLOHが観察された。D12Mit233ローカスで最も高く、リンパ腫125例中83例がLOHを示し、その頻度は66%であった。セントロメア側のD12Mit132ローカスでは57%であり、逆にテロメア側のD12Mit181ローカスでは62%であった。 2.別の亜種間クロス(CXSD x MSM/Ms)F2マウス586匹を用い、マイクロサテライトローカス・マーカーを可能な限り入手し、それらの配列順序とマーカー間の精密な距離を決定した。配列順序は、セントロメア側からテロメアに向かってD12Mit132,D12Mit50,D12Mit122,D12Mit53,D12Mit233,D12Mit279,D12Mit181,D12Mit80であった。 3.上記領域周辺にLOHを示した89例のリンパ腫について、LOH領域の範囲を調べた結果、最小共通領域はD12Mit53からD12Mit233までの0.85cMであった。この領域に癌抑制遺伝子の存在が予想された。
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