研究概要 |
リンパ腫発生に関わる遺伝子を明らかにするため、亜種間交配マウス(BALB/cHeA x MSM/Ms)F_1を用い、放射線誘発リンパ種のゲノムの変化を調べた。X線分割照射により発生した胸腺リンパ腫について、PCRでヘテロ接合性の消失(LOH)を検索した。発がんに関わるがん抑制遺伝子を同定するために、高頻度のLOHが観察される領域を絞り込んだ。結果の概要は以下のとおりである。 1.第12番染色体において、著しく高い頻度のLOHが観察される領域周辺の三つのがん関連遺伝子[Tcl1(T cell lymphoma 1:T細胞リンパ腫遺伝子1),Tnfα ip2(Tumor necrosis factor-induced protein 2)、Yy1(Yin Yang 1:転写因子)]を分析した。三つの遺伝子の配列や距離は次のように決定された;[centromere]-Tcl1-(≧0.085cM)-D12Mit50-(0.085cM)-D12Mit132-(1.96cM)-D12Mit122-(0.085cM)-D12Mit53-(1.37cM)-[D12Mit233,D12Mit279,Yy1]-(0.085cM)-D12Mit181-(0.17cM≦)-Tnfα ip2--[telomere]。遺伝子の詳細な位置と発現状態は、これらの遺伝子が放射線によるマウスリンパ腫発生に寄与する候補遺伝子ではないことを示唆した。 2.D12Mit233を含む酵母の人工染色体(YAC)の末端から得た多型マーカーY184pR2とY152pR1におけるLOH頻度はそれぞれ71%(210例のうち149例)と70%(同147例)であり、前者ではこれまでの最高に達した。Y184pR2にLOHのピークがあり、がん抑制遺伝子の存在が予想された。
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