研究課題/領域番号 |
09480128
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
法村 俊之 産業医科大学, 医学部, 教授 (20039530)
|
研究分担者 |
野元 諭 産業医科大学, 医学部, 助手 (90258608)
大津山 彰 産業医科大学, 医学部, 助教授 (10194218)
加藤 文雄 産業医科大学, 医学部, 助手 (20309959)
|
キーワード | p53遺伝子 / アポトーシス / 奇形 / 放射線 / 線量率 / 組織修復 / p53ノックアウトマウス |
研究概要 |
p53.はさまざまなストレスに対して個体を守るための生体危機管理装置として作用している。主要器官形成期に2GyのX線照射すると、p53^<+/+>マウスでは胎内死亡が60%、奇形の発生頻度は20%未満である。p53^<-/->マウスでは胎内死亡頻度は小さいが、奇形の発生は70%にも達する。正常マウスの初期胚には、発生異常を起こすような傷をもつ細胞を積極的に排除する組織修復機能が存在し、それを支配しているのがp53遺伝子である。事実、p53^<+/+>マウスの胎仔組織ではX線被曝数時間後に大量のアポトーシス死(p53の転写活性を経由しない即時型のアポトーシス)がみられるのに対して、p53^<-/->マウス胎仔ではそのような細胞死はみられない。 p53遺伝子へテロ変異(p53^<+/->)マウスも正常マウスに比べ放射線致死抵抗性である。しかし、2GyのX線照射後に生まれてきたp53^<+/->マウスには、30%の高頻度(自然発生率で補正)で奇形が発生した。さらに、単位線量(1Gy)当りの放射線誘発アポトーシスの発生率はp53遺伝子が正常か否かに依存し、p53^<+/->マウス胎仔細胞はp53^<+/>+マウス胎仔の約半分である。p53^<+/->マウスが好催奇性であるのは、このアポトーシス活性の低下によるものと思われる。 また、正常なp53遺伝子をもつ主要器官形成期のマウスに^<137>Csγ線を高線量率(2分間で2Gy)で照射した場合、胎仔の80%(自然発生率14%で補正)に発生異常が誘発される。しかし、この異常胎仔の発生率は、放射線線量率に大きく依存し、24時間で2Gyの低線量率照射では、発生異常の増加は全くみられない。胎児期被曝では、アポトーシスを介した組織修復により、低レベル放射線で生じる少々の損傷は組織から排除され、蓄積は起こらないものと思われる。
|