研究課題/領域番号 |
09480128
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
法村 俊之 産業医科大学, 医学部, 教授 (20039530)
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研究分担者 |
野元 諭 産業医科大学, 医学部, 助手 (90258608)
大津山 彰 産業医科大学, 医学部, 助教授 (10194218)
加藤 文雄 産業医科大学, 医学部, 助手 (20309959)
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キーワード | p53遺伝子 / アポトーシス / 奇形 / 放射線 / 線量率 / 組織修復 / p53ノックスとマウス |
研究概要 |
我々はこれまでに、p53遺伝子の機能を欠損したp53(-/-)マウスとヘテロ欠損マウスp53(+/-)を作り、正常のp53(+/+)マウスを加えて、三者で催奇性障害を定量的に比較・解析できる実験系を開発し、DNA損傷の危機から胎児を守り、奇形の発生を防ぐ"組織の守護神"としてのp53の重要な役割を明らかにしてきた(Nature Med.,2(5):577-580,1996)。本研究では、これまでの研究成果を踏まえ、それをさらに発展させる方向で、p53依存性アポトーシスと組織修復の分子機序、さらに、催奇性障害の線量率依存性等を明らかにし、放射線被曝の奇形及び発がんリスクにおけるしきい線量の実態に関しても、生体防御機能の観点から解明することを目指した。 その結果、放射線などによりDNAに損傷が生じると、細胞は細胞周期を遅延させるとともにDNA損傷部の修復を行う。細胞の状況によっては、p53が不治のDNA損傷を認識してアポトーシスを誘導し、損傷細胞を組織から排除する。この2つの機能(DNA修復とアポトーシスを介した組織修復)がうまく協力して働くと、低レベル放射線などで組織にできる少々の傷は完全排除され、ダメージは蓄積されないことが強く示唆された。p53正常(+/+)マウスでは、X線2Gy被曝の奇形リスクは低線量率(1.2mGy/min)照射でゼロになる。さらに、放射線誘発アポトーシス活性は、p53遺伝子が正常か否かに依存し、ヘテロ欠損p53(+/-)マウスが好催奇性であるのは、このアポトーシス活性の低下(p53(+/+)マウスの約半分)によるものと思われる。
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