研究概要 |
NO合成酵素のアゾ色素分解反応を調べた。人工的に合成されたアゾ化合物は繊維産業、食品、化粧品など多くの分野に利用されている。しかし、いくつかのアゾ化合物は安定で分解し難く、環境汚染物質になっている。又、ジメチルアミノアゾベンゼンなどは体内で還元されるとラジカルが生成し、それがDNAと相互作用して強い発ガン活性を示す。我々は、脳において重要な働きをする一酸化窒素(NO)を合成する酵素、一酸化窒素合成酵素(NOS)、がアゾ化合物を分解する可能性を調べた。電子吸収スペクトルでメチルレッドのアゾの吸収を追跡した。メチルレッドのアゾの440nm付近の吸収スペクトルはNOS/NADPH/Ca^<2+>/カルモデュリンを添加することにより急速にその強度が減少した。この生成物をガスクロマトグラフィー質量分析計を用いて同定した所、メチルレッドのアゾ結合が分解してできる化合物ジメチルフェニレンヂアミンが検出された。このことより、NOSはメチルレッドのアゾ結合を分解し、その回転数は1分当たり130であると評価された。このNOSによるアゾ分解反応はNADPH,Ca^<2+>,カルモデュリンのどれが欠けても進行しなかった。又、ヘムへの阻害剤であるシアンを添加しても反応は影響されなかったが、フラビンの阻害剤であるジフェニレニアイオドニウムを添加すると反応は完全に阻害された。このことより、アゾの分解に必要な電子はNADPH還元酵素ドメインから到達することが示唆された。このことは、ヘムドメイン及び還元酵素ドメインのいくつかの変異体を用いても確かめられた。さらに、電子共鳴スピンスペクトルを用いて、メチルレッドのアゾ還元に伴って生成する窒素ラジカルを検出することが出来た。
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