研究概要 |
果樹園等のように比較的点状に集中施肥が行われる際の散水または,降雨に伴う肥料からの未利用硝酸イオンの土壌浸透を想定し,ガラスビーズを模擬土壌層とした長さ約60cmのカラム充填層を作製し,上部から,硝酸イオン含有水を種々の速度で供給しながら,カラム内間隙水分分布および浸透速度等を測定した.表層からの水供給速度が小さい場合には,カラム内は,基本的に不飽和状態であったが,供給速度が大きくなると不飽和領域と飽和領域が形成された.予め実験室内で脱窒細菌培養基質に3日間浸漬した粒状活性炭を活性汚泥培養槽に2週間程度浸漬して生物を付着固定した後,カラム下部に数cmの厚みで充填し,活性炭層の下部に陰極および陽極となる電極を埋設してカラム表層から硝酸イオン含有水を供給しながら,種々の条件で通電を行い,本法による硝酸イオン除去と浸透抑制の検討を行った.実験初期には,活性炭層に残留していた有機成分を脱窒の水素供与体とした硝酸イオン除去が進行していたが,その後ほとんど硝酸イオン除去をしなくなり,電極に100mA程度の通電したところ,陰極生成水素を利用した脱窒が進行し,通電量の増大とともに除去率も増大した.カラム軸方向の硝酸イオン濃度分布測定から脱窒ゾーンは,おもに活性炭層であった.陰極で通電により生成した水素は,間隙を通って移動し,脱窒細菌密度の高い活性炭層で硝酸イオン還元に利用されるが,電流値から理論的に得られる水素生成量に比べて脱窒への利用率は,大きいとはいえず,電極面から活性炭層までの水素の移動に対する間隙の飽和・不飽和の分布や状態が大きく影響することが推察された.また,本法による硝酸イオン除去の現象を簡易に表す物質移動・反応モデルを構築した.
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