悪臭に対する苦情件数は、全体の約4分の1を占め、騒音・振動に続いて2番目に多い。それにもかかわらず、他の公害に比べてその対策が非常に遅れている。臭気は非常に希薄な濃度でも嗅覚に感じ、また多種多様な成分がある。下水や屎尿処理場や畜舎などからの排気は、活性炭やオゾン、あるいは薬剤などで処理をしているが、いずれも大規模な装置や維持費を必要とする。悪臭公害の防除には、発生源を根本的に処理する方法と発生した悪臭成分をそれ以上揮散しないように捕集する2つの方法がある。われわれは、悪臭性の天然有機廃棄物に好んで生育し、廃棄物中の悪臭成分を分解する悪臭化微生物群を見い出している。本研究では、環境庁指定の悪臭成分である悪臭性揮発性脂肪酸(VFA)を高性能に分解する微生物を種菌中から分離し、固定化し、空気中のVFAの除去を行った。廃棄物の10%抽出寒天培地を用いて、種菌を分離源として144株を純粋分離した。さらに、悪臭性廃棄物抽出平板培地上にシャーレ-面にW字状に塗抹培養した。官能試験法で5人のパネラ-で判定し、122株を悪臭化微生物としてスクリーニングした。この内、VFAを良好に分離して生育する一菌株をRhodococcus sp.261と同定した。本菌株の生育pH及び温度はそれぞれ8〜9及び35〜40℃であった。本菌株は生育の炭素源として、悪臭性のVFAを利用し、グルコースなどの糖類を利用出来なかった。試した様々な担体の中から、多孔質のセラミックビーズが最も良かった。悪臭性のVFAを炭素源として液体培養した本菌株の菌体を減圧下でビーズに固定した。そして、アルミ製の容器に入れ、UV照射下で無菌的に2日間固体培養を行った。これをウオータージャケット付きガラス管(φ5cmx50cm)に入れて、下方からn-吉草酸を含む空気を通した。温度、通気量、pH、固定化菌数などを調節することにより数百ppmのn-吉草酸を長時間除去できた。
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