研究概要 |
1 レブンアツモリソウ種子発芽実験は今年度は成功しなかった。これは採取した未熟種子が適切な齢のものでなかったか、採取から実験までの保存に問題があったと考えられる。 2 礼文島においては、人工受粉種子播種後10年目の個体で初めて開花がみられた。観察地点の5x7m^2区域では185花のうち32が幼苗開花と確認された。幼苗開花の指標として、根が独立していること、背丈が8-15cmであること、背蕚弁の幅が2-3cmであることの3点を用いた。幼苗の生育は環境条件で大きく左右され、特に日照時間の覆いほどよい。日照不足の条件下では開花に13年もかかったものがあった。 3 6月の開花期に約200株の人工受粉をおこなった。受粉率は90%であった。また、9-10月に人工受粉種子の播種を40箇所でおこない、標識をたてた。 4 北海道内の道南、道央、道北、道東でアツモリソウ属の分布調査をおこなった。アツモリソウの自然生育は亜高山帯をのぞいては見られない。今後、保護対制をととのえることが急務であると考える。 5 奈良先端科学技術大の佐野浩教授研究室の協力を得て、カナダで採集したアツモリソウ属4種(Cypripedium acaule,C.reginae,C.arietinum,C.caloeolus)の植物体標品とレブンアツモリソウについてDNA解析をおこなった。葉緑体DNA上に存在するtrnL3'exon〜trnFの遺伝子領域をPCRにより増幅し、DNA塩基配列を決定して、分子系統樹を作成した。レブンアツモリソウについては、花色の変異にもかかわらず、このDNA領域においては多型はみられなかった。
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