1.モデル色素分子の新規合成 天然産クロロフィルを原料として、3^1/7/8/13^2/17^4/20位に様々な官能基を有する3^1位に水酸基と13位にケトカルボニル基を有するクロリン誘導体と、そのMg/Fe/Co/Ni/Cu/Zn/Pd/Ag/Cd錯体の合成を行った。 2.人工クロロゾーム系の構築 1で合成したクロリン錯体を、低極性有機溶媒/水-有機溶媒混合溶媒/界面活性剤を有する水溶液中もしくは固体薄膜/固体粉末状態で自己集積させた。生成した自己会合体の超分子構造の解明を、分光学的手法を用いて試みた。超分子構造が整った自己会合体を形成するためには、水酸基とケト基と中心金属がQ_y軸上に直線上に配置されていることが不可欠であることと、中心金属としてMg/Zn/Cd(もしくはCo)が有効であることを見い出した。 これらの自己会合体はいずれも、3^1位の水酸基と13位のケト基と中心金属間の特殊な結合(M… OH…O=C)ならびにクロリン環のπ-π相互作用によって形成されており、天然クロロゾームの良い構造モデルとなることが判った。周辺置換基は、この超分子構造に対してある程度の摂動を与えるが、主たる結合様式を変えるまでには至らなかった。 界面活性剤を有する水溶液中での合成色素の自己集積体は、界面活性剤によるミセル様の疎水的環境下で構築されており、そこにバクテリオクロリン骨格を有する色素を少量添加すると、クロリンの自己会合体からバクテリオクロリンへの励起エネルギーの移動が生じた。人工クロロゾーム系が、天然の機能モデルとしても働くことが実証された。 3.天然/人工クロロゾーム系の比較 天然型色素は、様々な置換基を有する同族体からなっている。この同族体がどのように自己集積しているのかは、まだ明確ではない。そこで、1で合成したモデル化合物の自己会合挙動を検討することで、この点を明らかにしようと試みた。
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