研究概要 |
微生物由来のコレステリルエステル転送蛋白質(CETP)阻害剤として土壌分離放線菌Streptomyces sp.WK-5344株の培養液より一連の化合物を見い出した。10Lのジャー培養液の菌体画分より溶媒抽出、ODSゲル、SiO_2カラムクロマトグラフィーにより3成分の緑色物質WK-5344-A、B及びCをそれぞれ1.69、1.12、2.63mg単離した。その分子式は、高分解能FAB-MSよりWK-5344-A(C_<45>H_<30>N_3O_<13>Fe)、B(C_<46>H_<30>N_3O_<14>Fe)、C(C_<45>H_<30>N_3O_<12>Fe)を与えた。各種NMR(COSY、HMQC、HMBC及びNOE実験)の解析より成分Cはferroverdin(Candeloro,S.ct al.,Nature,224,589(1969))と同定した。本物質は3分子の4-ethenylphenyl4-hydroxy-3-nitrosobenzoateが、鉄原子にキレートした構造であるが、他の2成分AとBはそれぞphenylbenzoateのうち1分子の末端メチレンに水酸基あるいはカルボン酸が結合した新しい構造であった。CETP活性は、[^<14>C]コレステリルエステルで標識した再構成高密度リポ蛋白質(HDL)から、ヒト血漿より調製した低密度リポ蛋白質(LDL)へ転送された放射活性で測定した。本活性に対する成分A、B及びCのIC_<50>値はそれぞれ0.62、2.2及び21μMと計算され、特に成分Aは非常に強い阻害活性を示すことが明らかとなった。 さらに類似の三員環性の骨格を有するクロロプウペヘノンがCETPを阻害するという報告をもとに、先の研究でアシル-CoAコレステロールアシル転移酵素(ACAT)阻害剤として発見したピリピロペンが三員環性の骨格を有するを有することからピリピロペン誘導体64種についてCETP阻害活性を測定した。その結果、5-デヒドロ-13-デオキシ、11-O-メシル誘導体が最も強い阻害活性を有しそのIC_<50>は6μMだった。構造と活性の相関はR4に見られ13-オキソ誘導体>5-デヒドロ-13-デオキシ誘導体>13-ヒドロキシ誘導体の順に強く13位にアシル基が導入された化合物は阻害活性が消失した。またCETP阻害活性とACAT阻害活性の間には全く相関が見られなかった。
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