研究概要 |
コレステリルエステル転送蛋白質(CETP)は各種リポ蛋白質間でコレステリルエステル(CE)やトリアルシルグリセロールなどの授受を仲立ちする役割を果たし、動脈硬化と深く関与していると考えられている。CETPの阻害剤が新しいタイプの動脈硬化形成の予防・治療剤となる可能性が考えられ、微生物代謝産物を対象にCETP阻害剤の探索を開始した。 CETP活性は、[^<14>C]CEを含んだ再構成高密度リポ蛋白質(HDL)から、ヒト血漿より調整した低密度リポ蛋白質(LDL)へ転送された放射活性で測定した。約2万株の微生物代謝産物を対象にその阻害剤を探索した結果、糸状菌よりエラブレノールと放線菌からはフェロベロジンと命名した新規化合物郡を発見した。既知化合物としてL681,512類、スクレチオリン類にCETP阻害剤活性を見い出した。中でもフェロベロジンBは現在まで報告された天然由来CETP阻害剤の中で最も強力な阻害活性を示した。一方、L681,512-1及びスクレチオリンはヒトCETP遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを使ったex vivoの評価でもCETP活性を有為に阻害する事がわかった。さらにモデル実験よりスクレチオリンはCETP分子中の重要なリシン残基あるいはN末端システイン残基と反応することにより、CETP活性を阻害することが示唆された。 今後本研究で発見されたいくつかの化合物、特に強力な阻害活性を示すフェロベロジンBを使って、予防・治療剤としての可能性を追求しさらに研究を展開させていきたいと考えている。
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