研究概要 |
ヘムオキシゲナーゼには二つのイソ酵素がありそれぞれHO-1,HO-2と呼ばれている.本酵素はヘムをヒドロキシヘム,ベルドヘム,ビリベルジン・鉄錯塩を経てビリベルジン,CO,鉄イオンに酸化的に分解する.本酵素は本来ヘム蛋白質ではないが,基質であるヘムを結合して出来たヘム・ヘムオキシゲナーゼ複合体はヘム蛋白質としての性質を持つ.その光吸収スペクトルを含む各種スペクトルはミオグロビンのそれらと酷似している.従って本酵素のヒスチジン(His)残基がヘムの第五配位子である可能性が高い.HO-1ではHis25が近位Hisであり,高度に保存されている領域中のHis132はヘム分解活性には全く関与していなかった.そこで今回HO-2のハムポケットの構造等がHO-1と同等かどうかを類推するために,HO-1のHis25とHis132に相当するHO-2のHis45とHis152について,それらをアラニンに変えた変異酵素(H45AとH152A)を作り大腸菌に発現させ,その精製酵素について検討した.その結果次の事実が知られた. 1.H45Aはヘムを分解する活性が全くなかった.2.H45Aとヘムとの複合体のEPRの結果からHis45はヘムの近位Hisであることが知られた.3.H152Aは大腸菌内で封入体として発現されていた.それを尿素処理によって再生しゲル濾過法にかけると二つの画分に分かれた.void volumeに溶出される画分には全くヘム分解活性が無かったが野生型酵素と同じ所に溶出される画分には野生型と匹敵する活性があった.またその画分とヘムとの複合体のスペクトルは野生型とは区別できなかった.この結果は以前米国の研究者によって報告された事実とは相反する結果であった. 以上の実験事実からHO-2のヘムポケトの構造やヘム分解の機構はHO-1と同様であろうと推察された.
|