研究概要 |
ミクロソーム酵素であるヘムオキシゲナーゼには二つのイソ酵素があり,HO-1とHO-2と呼ばれている.本酵素はヘムをヒドロキシヘム,ベルドヘム,ビリベルジン・鉄錯塩を経てビリベルジン,CO,鉄イオンに分解する.ヘムだけではなくヒドロキシヘム,ベルドヘムからの反応でもそれぞれ一分子の酸素が利用される.従って,三つの連続した一原子酸素添加反応が一つの酵素蛋白の上で起こっていることになる.反応に必要な電子は全てNADPH/P-450還元酵素より供給される.P-450還元酵素はミクロソーム酵素であり,通常,NADPHからの電子を同じくミクロソーム酵素であるシトクロムP-450に伝達する.その際,還元酵素とP-450の間で効率良く電子伝達が行われるように,二つの蛋白が適切な三次元配置をとると考えられている.そのような立体構築には還元酵素の酸性アミノ酸とP-450の塩基性アミノ酸が主要な役割を持つと報告されている.従って,HOの塩基性アミノ酸も電子の受取に重要な働きを持つことが推測される.そこで哺乳動物のHO-1とHO-2で保存されている20種類の塩基性アミノ酸,Arg,Lys,をAlaに置換した変異酵素を作成し活性を比較した.その結果,還元系としてNADPH/P-450還元酵素を用いた場合は,R35A,K39A,R44A,R136A,K148A,K149A,K153A,R185A,R196Aの9種の変異酵素で活性が低下した.然し,還元系としてアスコルビン酸や過酸化水素を用いた場合は,何れの変異酵素でも著明な活性低下は認められず,むしろ活性が高くなるものも二三見受けられた.この事実は9種の変異酵素ではアミノ酸置換によってヘムポケットの構造が変化た結果ヘム分解活性が低下した訳ではないことを明確に示している.従って,上記9種のアミノ酸が還元酵素からの電子伝達に関わっていると判断された.
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