核膜とゴルジ体は細胞分裂時に分解して小胞化し、分裂終期に小胞が融合して再形成される。これらのオルガネラの分解と再形成がどのような機構で調節されているのかはまだ全く不明である。我々はノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)がNRK細胞のゴルジ体の分解を引き起こすことを見い出し、この分解に三量体GTP結合タンパク質が関与していることをインタクトおよびセミインタクト細胞を用いて明らかにした。NDGAによるゴルジ体の分解は、インタクト細胞をN-エチルマレイミドで処理しておくと起らなくなるが、これはN-エチルマレイミド処理で低分子量GTP結合タンパク質であるARFが失活し、ゴルジ体のコートタンパク質が膜より遊離するためであることがわかった。 NSFはSNAPおよびSNARE(syntaxin、SNAP-25、VAMP-2などのサブユニットから成る)と複合体を形成して、小胞輸送における膜融合反応に関与している。NSFは有糸分裂終期のゴルジ小胞の融合にも関与していることが知られているが、我々はNSF複合体が核膜にも存在することを見い出した。核膜に結合したNSF複合体の役割を、アフリカツメガエルの卵母細胞抽出液を用いたin vitroの核膜融合のアッセイ系を用いて解析した。この系に抗SNAP抗体を加えると、核の成長(核膜小胞の融合)は著しく阻害された。SNAP-23はSNAREのひとつであり、そのC末端領域は機能発現に重要である。そこで、SNAP-23のC末端ペプチドの効果を調べたところ、ペプチドは0.6mM程度の濃度で核の成長を遅らせ、また形成された核を著しく不安定化させることがわかった。また、SNAP-23のC末端領域に対する抗体も同様に核の成長を阻害した。これらの結果は、NSFが有糸分裂後の核膜の形成にも関与していることを示唆している。
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