研究概要 |
原核生物は,PH,温度,浸透圧など絶えず変化している環境におかれており,生存のためには,外界の変化に敏感に対応しなければならない.このために,外界の変化を感知するセンサー蛋白質を細胞膜上に持ち,センサー蛋白質からのシグナルをリン酸化などの形で伝達し,最終的には生体の運動や蛋白質合成の制御に至るシグナル伝達システムを備えている.このシグナル伝達システムの最終ラインに位置し,蛋白質の発現を転写の段階で制御している一群の遺伝子制御蛋白質がある.大腸菌外膜蛋白質の発現の制御に関与しているOmpRは,その代表的なものである。本研究では,OmpRファミリーに属する遺伝子制御蛋白質のRNAポリメラーゼ活性化の分子機構をX線結晶構造解析により解明することを目的とした.平成9年度には,次の研究を行なった.ファミリー蛋白質のうちで,特に興味深いKdpEの全長,遺伝子制御ドメインそれぞれの大量発現系の構築と精製,結晶化を試みた.また,OmpRについても全長の結晶化を試みた。さらに,単独で転写活性を持っていることがわかっているOmpRのG227Cミュータントの大量発現系の構築と精製,結晶化を行なった.RNAポリメラーゼαサブユニットについては,蛋白質研究所の京極より試料提供を受け,結晶化を行なった.現在のところまだ,X線構造解析に供することのできる結晶は得られていない.しかしながら,サンプルの溶解度,安定性などについては,さまざまな実験の結果,改善されてきており,近い将来何らかの結果が得られるであろう。
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