Na^+駆動型モーターのエネルギー変換ユニットあるいはイオンチャネルに対応すると考えられる遺伝子(motX、motY、pomA、pomB)を我々は同定している。H^+駆動型モータータンパク質MotAとMotBとの相同性から、PomAとPomBは複合体を形成してNa^+チャネルとして機能していると考えられている。イオンチャネルとして機能していると推定されているpomA遺伝子産物の機能を調べるため、プラスミド上のpomAをヒドロキシルアミン処理してランダムに変異を導入し、正常なべん毛を持が運動できないpomA欠損株に導入して、軟寒天培地中のスワ-ム能を指標にして選択した。遊泳スピードの遅い変異体も期待したが、単離された37個すべて、完全に運動能を回復できないものだった。pomA遺伝子上の変異を同定するために、挿入されているpomAのコード領域の塩基配列決定を行ったところ、変異が見つからなかったものが6個、フレームシフトを起こしたものが1個、ナンセンス変異体が9個、1アミノ酸置換が16個、2アミノ酸置換が5個見つかった。そのうち1アミノ酸置換が起こった11残基中の7残基が、PomAの3番目と4番目の推定膜貫通領域に存在することが分かった。これらのアミノ酸変異部位は、PoAと相同な大腸菌のH^+駆動型モータータンパク質MotAで得られている運動能欠損変異部位と類似した位置にあり、どの部位も大腸菌や好アルカリ性BasillusのMotAでよく保存されていた。そのため、PomAにおいても、3番目と4番目の推定膜貫通領域がモーター回転機能に重要であると推測された。今後、さらに多くのミュータントを単離して変異部位を同定することや、他のモーター構成タンパク(PomB、FliGなど)との相互作用を調べていくことが、モータータンパクの機能解析において今後の課題である。
|