ナトリウム駆動型べん毛モーターのエネルギー変換機構の解析

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09480174
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 本間 道夫 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50209342)
• 研究分担者: 川岸 郁朗 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80234037)
• キーワード: イオンチャネル / エネルギー変換 / ビブリオ菌 / べん毛 / モーター / ナトリウム駆動力

研究概要

Escherichia coliやSalmonella enterica serovar typhimuriumのH^+型べん毛モーターを形成するタンパク質にはMotA、MotBが固定子として、FliG、FliM、FliNが回転子として同定されている。特に回転力産生に重要なものはMotAの細胞質内ループ領域とFliGのC末端領域の静電気的相互作用であると考えられている。Vibrio parahaemolyticusやV.choleraeのNa^+型べん毛モーターの固定子はPomAとPomB(それぞれMotA、MotBに相当)、MotX、MotY、回転子はFliG、FliM、FliNから構成されている。そこで回転子のタンパク質の中で特に重要なFliGに注目し、V.cholerae間の全ゲノム配列が明らかになったのをとらえ、そのDNA配列をもとに、PCR法でV.alginolyticusのfliGをクローニングした。DNA配列から推定されるアミノ酸は残基数351、分子量約39kDaであった。V.parahaemolyticus、E.coliのFliGのアミノ酸配列と比較すると、それぞれ96%、40%の相同性が認められた。回転力産生に重要なC末端領域で特に保存されていた。既存の極べん毛変異を相補させることで、クローン化された遺伝子がナトリウム駆動型べん毛のものであることも明らかにした。さらに、FliGのC末端にヘキサヒスチジンを導入し、大腸菌でHis_6-FliGを大量発現させ、細胞質からHis_6FliGをNi-NTA agarose、Superose6で精製する事に成功した。また、V.alginolyticusのfliG^-株でHis_6-FliGを発現させ、FliGと他のべん毛モーター構成タンパク質を共分離するため、細胞膜画分からNi-NTA agarose、Superose6を使いHis_6-FliGを精製した。その結果、His_6-FliGと共に450kDaから1000kDaのフラクションにPomAも検出された。この検出された複合体は回転力産生ユニットに対応しているのかもしれないと考えられた。モーターの固定子と回転子構成蛋白質を精製することによりお互いの相互作用を計測できるようになると期待される。PomAの細胞質部分とFliGのC末端部位が静電的な相互作用があると推測されている。両者の荷電残基をシステインに置換した変異体を作成し、直接的な結合があるのを現在確認中である。

研究成果

• [文献書誌] Sato,K.,and M.Homma.: "Multimeric structure of PomA, the Na^+-driven polar flagellar motor component of Vibrio alginolytiucs."J Biol Chem.. 275(26). 20233-20228 (2000)
• [文献書誌] Yorimitsu,T.,K.Sato,Y.Asai,and M.Homma.: "Intermolecular cross-linking between the periplasmic loop_<3-4> regions of PomA, a component of the Na^+-driven flagellar motor of Vibrio alginolyticus"J Biol Chem.. 275(40). 31387-31391 (2000)
• [文献書誌] Asai,Y.,R.E.Sockett,I.Kawagishi,and M.Homma.: "Coupling ion specificity of chimeras between H^+- and Na^+-driven motor proteins, MotB and PomB, in Vibrio polar flagella."EMBO J.. 19(14). 3639-3648 (2000)
• [文献書誌] Kojima,S.,T.Shoji,Y.Asai,I.Kawagishi,and M.Homma.: "A slow-motilty phenotype caused by substitutions at residue Asp31 in the PomA channel component of a sodium-driven flagellar motor."J.Bacteriol.. 182(11). 3314-3318 (2000)
• [文献書誌] Yorimitsu,T.,and M.Homma.: "Na^+-driven flagellar motor of Vibrio."Biochem.Biophys.Acta-Bioenergetics. in press (2001)
• [文献書誌] Sato,K.,and M.Homma.: "Functional reconstitution of the Na^+-driven polar flagellar motor component of Vibrio alginolyticus."J.Biol.Chem.. 275(8). 5718-5722 (2000)