本研究は、シンクロトロン放射光を使ったX線回析実験によって収縮中の筋肉のアクチンフィラメント反射の強度と位置(スペーシング)の変化を高時間分解能で調ぺ、アクチンフィラメントの構造変化・伸展性と張力発生の関係を明らかにすることを目的としている。 高速X線検出器システムとしてのドラム型イメージングプレート装置の問題点を克服するために、本年度はイメージインテンシファイアーとCCDカメラを併用したテレビ型検出器を新たに導入した。イメージインテンシファイアにゲートパルス電圧をかけ、サブアレイモードで2次元画像の1軸上(子午軸上)の回折像を10ミリ秒間隔で時分割測定することが可能となった。これとシンクロトロン放射光を使って、カエル骨格筋の等尺収縮中および等尺収縮時に筋長変化を与えたときの子午軸上反射の時分割測定を行った。その結果、ミオシンクロスブリッジの14.3nm周期の2次反射の強度とスペーシング変化は収縮の初期及び弛緩時は張力に先行するが、収縮中の筋長変化時には張力変化に平行的に起こった。ー方、アクチンに結合したトロポニン由来の子午反射は、ミオシン反射に比して強度が2桁近く弱く、十分なS/Nで測定ができなかったが、収縮中強度が減少し、スペーシングは増大する傾向を示した。このようにサブアレイモードでこの検出器を使うことにより高速の時分割測定が可能であることが判明した。今後はもっと測定回数を増やしたり、強い放射光X線を利用することで弱いアクチン反射の変化を良いS/Nで測定することを目指す。 一方、収縮筋に遅速筋長変化を与えたときのX線回析像の変化を0.8秒でイメージングプレートを使って二次元的に測定した。伸長時にはアクチンフィラメントの捻れ変化とミオシン由来の子午反射の強度変化に強い相関があることが示唆された。ミオシン反射に関してはテレビ検出器の結果と相補的であった。高遠時分割測定によりさらにこの関係を確かめることが今後の課題である。
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