研究概要 |
真核生物において、TBPはTFIID、SL1あるいはTFIIIB複合体の構成成分であり、全クラスの遺伝子の転写に関与する普遍的転写因子である。TBPは多くの転写制御因子、転写メディエーター、癌関連産物などと結合し、これらの転写制御シグナルはTBPを介してプロモーターに伝達される。TBPと相互作用する因子は転写開始の調節において重要な役割を持つ。 我々は120kDのTBP結合性蛋白質(TIP120)を同定し、そのcDNAを単離した。TIP120は自身でTBPと結合することができ、細胞内でTBPを含む巨大な複合体の一部となっていた。生化学的解析より、TIPl20はプロモーター構造に非依存的に転写を活性化でき、活性化の標的としてpolIIがプロモーターに取り込まれる転写開始複合体形成後期が重要である事を見いたした。また、培養細胞を用いたルシフェラーゼアッセイにおいても転写の活性化が認められた。興味深いことに、TIPl20はpolII単独による非特異的な転写をも活性化する。TIP120はpolIIに対して質的な変化をもたらし、プロモーターへの取り込みを促進することで、転写を活性化すると推測された。我々はさらに解析を進め、TIP120がDNA修復等に関与するプロテインキナーゼDNA-PKと,低いながらもホモロジーを示すこと、実際にプロテインキナーゼ活性を有することを生化学的に証明し、その基質がpolI、II、IIIの共通サブユニットRPB6である事を同定した。さらに、TIP120はpolIやpolIIIによる非特異的転写、および特異的転写においても促進効果を示した。 TIP120はRNAポリメラーゼをリン酸化する事で、クラスを超えて転写を活性化できる新しいタイプの転写因子である可能性が考えられる。
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