研究概要 |
ヒト人工染色体構成蛋白因子の解析と人工染色体を用いたマウス個体の形質転換 ヒト21番染色体セントロメア領域から約80kbのアルフォイドDNA断片を酵母人工染色体(YAC)を用いてクローン化し、このYACをヒト培養細胞へ導入すると宿主染色対外で複製され安定に分配維持されるミニ人工染色体(MAC)が高い頻度で形成された。本研究ではこの人工染色体技術を用い、1.染色体安定維持に必須な機能領域、特にセントロメア・キネトコア、構成因子の解明、2.マウス受精卵へのMACの導入と、増殖、発生過程での導入MACの挙動と安定性の解析、等を目的として研究を進めた。 A) 人工染色体の安定維持に関わる領域に関する研究 YACに挿入されでいる80kbのアルフォイドDNAの断片化クローンシリーズを作成し、各断片化YACクローンDNAをHT1080細胞へ導入し人工染色体形成能を解析した結果、50kbの挿入アルフォイド配列を持つYACでは元の80kbYACと同程度の形成能が観察されたが、30kbYACでは形成効率が低下し、10kbYACではほとんど形成されなかった。安定な人工染色体形成には50kb以上のアルフォイド配列の繰り返しが必要であることが判明した。 B) セントロメア・キネトコア機能に必須な蛋白因子の解析 セントロメア・キネトコア蛋白(CENP-A,-B,-C)に対するモノクローナル抗体を作製し、細胞核抽出物を解析した結果、これら蛋白は同一の複合体に含まれることが判明した。 C) MACによるマウス個体の形質転換と安定維持の解析 ヒト培養細胞中で人工染色体を形成したアルフォイドYACDNAをマウス受精卵へ導入し、この受精卵を母体に戻し子マウスを多数得た。これら子マウスの尻尾DNAをPCRで解析した結果、導入YACを保持した個体(トランスジェニックマウス)を得ることに成功した。導入YACがマウス染色体外に人工染色体として維持されているかどうか現在解析中である。
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