研究概要 |
我々がマウスHoxの標的として単離した遺伝子の一つ(mmab1)は、線虫の形態形成に関わる遺伝子mab21のマウスオーソログであった。遺伝学的解析からmab21は線虫Hox遺伝子の一つegl5の標的である可能性が指摘されていた遺伝子であった。このことはこの遺伝子が種をこえたHox標的遺伝子であることを示していると考えられる。この遺伝子の発現調節機構を明らかにするため、レポーター遺伝子を導入したトランスジェニック線虫を用いて転写調節領域の詳細な解析を行った。線虫mab21遺伝子はhypoder mis,neuron,ray(雄の生殖に関わる感覚器官)で特異的に発現しているが、昨年度行ったトランスジェニック個体の解析から、それぞれの領域での特異的発現に関わるエレメントを特定した。今年度はそれぞれのエレメントを介した発現調節にどのような転写因子が関わっているかを明らかにするため、エレメントの詳細な解析を行った。Hypoder misでの特異的発現調節エレメントは遺伝子の上流に存在するが、このエレメント中のGATA配列がその発現に必要であり、線虫に複数存在するGATA因子の一つがhypoder misでの発現に関わっていることが明らかになった。Neur onでの発現を規定している調節エレメントは第4イントロンに存在するが、neur onでの発現には、このエレメントに含まれるPOU配列が重要であり、UNC86蛋白がその発現を制御していると考えられる結果を得た。Hox(egl5)遺伝子とmab21遺伝子との遺伝学的な相互作用はrayにおいて観察されるが、rayでの発現に関わるエレメントも第4イントロン中にあり、この配列を介してEGL5遺伝子産物による発現制御を受けていると考えられる。
|