本研究は細胞・基質間接着装置ヘミデスモソームに存在する分子の形態を解析し、構成成分同士の相互作用を調べることによりヘミデスモソーム構築様式を明らかにすることを目的としている。研究目的を達成するために、本年度は10年度の研究計画をさらに発展させるとともに、新たな計画にも着手し、次のような成果を得た。 1 昨年、BPI80分子は組織中の細胞でも培養細胞でも細胞外部分は120kD断片として切断、放出されることを報告したが、今回この切断は細胞質内膜系で起こっているのではなく、細胞表面膜上で起こっていることを実験的に照明した。また蛋白質分解酵素の阻害剤を用いた実験から、切断酵素はマトリックスメタロプロテアーゼの一種であることが示唆された。 2 ヘミデスモソーム関連細胞外マトリックス分子として同定したXII型コラーゲンの分子形態を低角度回転蒸着法で解析し、ブーケ様の形態であることを明らかにした。 3 ヘミデスモソーム斑タンパク質BP230分子の選択的スプライシング産物をPCR法で解析した結果、亜鈴形の通常の分子の他に、中央のロッドドメインを欠く分子の存在する証拠を得た。 4 単離ヘミデスモソーム画分の主要成分、500kDのHD1の生化学的、分子生物学的研究の結果、この分子が細胞骨格と膜をつなぐ多機能架橋分子であるプレクチンと同じであることを照明した。 5 共同研究として、腫瘍併発型天疱瘡の患者血清中にHD1/プレクチンに対する自己抗体が存在することを明らかにした。また、この分子に遺伝的欠陥のある患者を調べ、遺伝子(PLEC1)レベルで新しい突然変異を同定した。
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