本基盤研究はヘミデスモソームの主要構成タンパク質を生化学的および分子形態学的に解析を進め、接着構造体としてのヘミデスモソームの全体像を明らかにすることを目的として行った。 具体的成果として特に膜貫通分子ではBP180、プラーク分子ではHD1について解析が進み、分子の形態と動態がかなり明らかになった。 1 培養細胞の界面活性剤処理で得た可溶性画分からBP180分子を単離精製し、分子形態の概略を明らかにした。次に、BP180分子は細胞外部分が切断され、120kD断片として組織中や培養上清中に放出されることを明らかにし、切断の生物学的、病理学的意義を提唱した。また自己抗体が抗原であるBP180分子に結合すると、抗原抗体複合体は細胞中に取り込まれることを明かにし、これが原因でヘミデスモソーム形成に支障が起こる可能性を示唆した。共同研究により、BP180分子に欠陥のある患者を調べ、遺伝子レベルで新しい突然変異を同定した。劣性ホモの患者で体の一部に変異が元に戻り、皮膚がモザイク状に回復した例を報告した。モノクロ-ナル抗体を用いた胎児診断も行った。 2 HD1はヘミデスモソーム斑の最も細胞質側に局在しており、接着分子とケラチン細胞骨格をつなぐ分子と思われている。モノクローナル抗体を用いた蛍光抗体法、HD1分子の部分アミノ酸配列決定、部分cDNAクローニングおよびエピト-プ部位の決定等から、またプレクチンの遺伝的欠損を原因として、単純型表皮水疱症と重度の筋ジストロフィーを併発する患者の皮膚の解析からも、HD1は細胞骨格と膜をつなぐ多機能架橋分子プレクチンであると同定した。共同研究としてHD1の局在を調べ、私たちの提唱したII型ヘミデスモソームのさらなる解析を行った。またトランスフィクションを用いた系で、HD1の局在はインテグリンβ4に一致することを明らかにし、実際にインテグリンβ4分子がHD1分子と相互作用することを示した。
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