平成9年度は、細胞の同調性の優れたバフンウニ、およびヒーラ細胞cDNAライブラリーより、ミオシン軽鎖をリン酸化しうるキナーゼ遺伝子の単離を行うことを第一の目的とした。すでに、予備的な実験で、キナーゼの共通ドメインの配列をもとにしたプローブを用いて2種類のクローンを単離しており、そのうちバフンウニライブラリーから得られた一種類の遺伝子の配列は、MAPキナーゼカスケード最下流のMAPKAPキナーゼ2に類似の配列を持っていることが明らかになった(MAPKAPキナーゼ4)。遺伝子の全構造を明らかにして、大腸菌に導入し、発現タンパク質を得て、そのキナーゼ活性を検討し、ミオシン軽鎖のMLCKリン酸化部立をリン酸化すること、リン酸化されたミオシンATPose活性が上昇することを明らかにした。これらの結果は、MAPキナーゼ力スケードが、ミオシンのリン酸化に重要な役割を担っている可能性を初めて指摘したものである。平成10年度は、もう一つの得られたクローン(ヒーラ細胞ライブラリーから)について、遺伝子の全構造を明らかにした。その結果、アポトーシスに関連の深いDAPキナーゼのホモログであるZIPキナーゼに配列が類似していることが明らかになった。同様に大腸菌にzipキナーゼホモログの遺伝子を導入して発現タンパクを得、そのミオシン軽鎖リン酸化活性を検討したところ、ミオシン軽鎖のMLCKリン酸化部位(2カ所)をリン酸化すること、そのリン酸化はカルシウム、カルモジュリン非依存的である事、が明らかになった。
|