1999 年度実績報告書

膜リン脂質の位置情報に基づく細胞骨格制御:リン脂質配向性制御因子の同定と神経軸索形成における役割

研究課題

研究課題/領域番号	09480201
研究機関	(財)東京都医学研究機構
研究代表者	梅田真郷財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (10185069)
研究分担者	竹内研一財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (70270684) 伊藤康一財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (30291149)
キーワード	リン脂質 / 細胞骨格 / 脂質二重層 / 細胞膜 / 神経細胞 / アクチン / 酵母 / ホスファチジルエタノールアミン
研究概要	昨年度までに我々は、細胞分裂や開口放出に伴う形質膜の融合に伴いホスファチジルエタノールアミン(PE)の脂質二重層内外での非対称分布が一過的かつ局所的に解消され、この脂質分子の動きが局所におけるアクチンフィラメント系再編の引き金となることを明らかにした。さらにPE分子の動きが如何なる分子により制御され、その局在に関する情報がどの様なメカニズムで細胞骨格系に伝達されるのかを明らかにする目的で、形質膜におけるリン脂質配向性の制御に異常を来した酵母変異細胞株を樹立し、その原因遺伝子の解析を進めてきている。本年度、原因遺伝子の一つとして同定したROS3遺伝子のコードする蛋白質Ros3p(414アミノ酸残基)に着目して解析を進めた。その結果、1)抗ペプチド抗体による細胞染色の結果、Ros3pが形質膜に多く存在する分子である、2)蛍光標識した各種リン脂質の細胞内への取り込みを野生株、ROS3遺伝子破壊株で比較した結果、Ros3pが細胞外から細胞内へのリン脂質の輸送を制御する、3)ROS3遺伝子破壊株ではエンドサイトーシスの異常は認められないことから、Ros3pが形質膜におけるリン脂質のフリップ・フロップの制御に関わる可能性が強い、4)ROS3遺伝子破壊株は、バナナ様の形態異常、アクチンパッチの分布異常を示す、5)Ros3pを過剰発現させた株では複数ヶ所からの出芽が観察され、同分子が出芽部位の決定や極性の形成にも関与する、ことが明らかとなった。これらの結果は、Ros3pがリン脂質分子の配向性を制御するとともにアクチンフィラメント系の再編にも関わり、酵母の出芽部位の決定や極性形成にも関わることを示している。また、マウスよりROS3と相同性の高い配列を有するcDNAクローンを得て、その全遺伝子配列を決定した結果、予想されるアミノ酸配列の30%が酵母Ros3pと同一であり、全アミノ酸の48%が高い相同性を示した。本年度得られた知見は、Ros3pが広く保存された機能を持つことを示唆し、膜脂質動態と細胞骨格のクロストークにおいて重要な役割を果たす蛋白であることを強く支持するものとなった。

研究成果
(6件)

すべてその他

すべて文献書誌 (6件)

[文献書誌] Emoto, K., et al.: "Isolation of a Chinese hamster ovary cell mutant defective in intramitochondrial transport of phosphatidylserine"Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 96. 12400-12405 (1999)
[文献書誌] Umeda, M. et al.: "Membrane phospholipid dynamics during cytokinesis : Regulation of actin filament assembly by redistribution of membrane surface phospholipids"Chemistry and Physics of Lipids, Review. 101. 81-91 (1999)
[文献書誌] Satoh, O. et al.: "Membrane structure of hepatitis B virus surface antigen particle"J. Biochem.. (in press).
[文献書誌] Kobayashi, H. et al.: "Lethal and non-lethal responses of spermatozoa from a wide variety of vertebrates and invertabrates to lysenin, a protein from the coelomic fluid of the earthworm Eisenia foetida"J. Exp. Zoology. (in press).
[文献書誌] 梅田真郷、榎本和生: "膜融合におけるリン脂質ダイナミクスと細胞骨格制御"生物物理. 21. 18-23 (1999)
[文献書誌] 榎本和生、加藤詩子、梅田真郷: "リン脂質の細胞膜動態と細胞分裂制御膜と細胞骨格系の新たなクロストーク"蛋白質核酸酵素. 44. 1173-1180 (1999)

1999 年度 実績報告書

膜リン脂質の位置情報に基づく細胞骨格制御:リン脂質配向性制御因子の同定と神経軸索形成における役割

研究代表者

梅田 真郷 財団法人 東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (10185069)

研究成果

[文献書誌] Emoto, K., et al.: "Isolation of a Chinese hamster ovary cell mutant defective in intramitochondrial transport of phosphatidylserine"Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 96. 12400-12405 (1999)

[文献書誌] Umeda, M. et al.: "Membrane phospholipid dynamics during cytokinesis : Regulation of actin filament assembly by redistribution of membrane surface phospholipids"Chemistry and Physics of Lipids, Review. 101. 81-91 (1999)

[文献書誌] Satoh, O. et al.: "Membrane structure of hepatitis B virus surface antigen particle"J. Biochem.. (in press).

[文献書誌] Kobayashi, H. et al.: "Lethal and non-lethal responses of spermatozoa from a wide variety of vertebrates and invertabrates to lysenin, a protein from the coelomic fluid of the earthworm Eisenia foetida"J. Exp. Zoology. (in press).

[文献書誌] 梅田真郷、榎本和生: "膜融合におけるリン脂質ダイナミクスと細胞骨格制御"生物物理. 21. 18-23 (1999)

[文献書誌] 榎本和生、加藤詩子、梅田真郷: "リン脂質の細胞膜動態と細胞分裂制御膜と細胞骨格系の新たなクロストーク"蛋白質核酸酵素. 44. 1173-1180 (1999)

1999 年度実績報告書

梅田真郷財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (10185069)