初期発生胚の転写調節カスケードの研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09480205
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 嶋田 拓 広島大学, 理学部, 教授 (70011559)
• 研究分担者: 中坪 敬子 広島大学, 理学部, 助手 (40192760) ; 赤坂 甲治 広島大学, 理学部, 助教授 (60150968)
• キーワード: ウニ / 転写調節 / アリールスルファターゼ / 遺伝子 / Otx

研究概要

本研究は、ウニ胚アリールスルファターゼ(Ars)遺伝子をモデルとして、初期発生胚における遺伝子の発生時期特異的・組織特異的発現を調節する転写調節因子カスケードの解明をめざすものである。本研究期間に得られた成果は次の通りである。
(1)ウニArs遺伝子の第1イントロンのGGATTA配列に結合する転写因子HpOtx_Lが実際にエンハンサー因子として働くことを、酵母Ga14-UAS系を用いたトランスアクチベーション実験で明らかにした。
(2)HpOtxLのみの転写促進活性はあまり高くないが、エンハンサー領域のGGATTA配列付近に存在するCAAT配列が協調して働くことによって強い転写促進活性が現れることがわかった。
(3)ウニ胚におけるアリールスルファターゼ(Ars)遺伝子の発生時期特異的発現はプロモーター領域(-252〜+38)にある2個の異なるシスエレメントによって調節されていることは昨年度に報告したが、これらのシスエレメントの一つが、転写因子Soxの結合配列であること、この配列を欠失させると転写が低下することがレポーターアッセイによりわかった。Ars遺伝子転写開始期のウニ核にはSox結合部位に結合する蛋白質があることをゲルシフトアッセイで明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] N.Sakamoto: "Two isoforms of orthodenticle-related proteins (HpOtx) bind to the enhancer element of sea urchin arylsulfatase gene." Developmental Biology. 181. 284-295 (1997)
• [文献書誌] Koji Akasaka: "Oral-aboral ectoderm differentiation of the sea urchin embryos is disrupted in response to calcium ionophore." Development Growth and Differentiation. 39. 373-379 (1997)
• [文献書誌] Junji Morokuma: "A cis-regulatory element within the 5' flanking region of arylsulfatase gene of sea urchin,Hemicentrotus pulcherrimus." Development Growth and Differentiation. 39. 469-476 (1997)
• [文献書誌] Daisuke Kurokawa: "Cloning of cyclin E cDNA of the sea urchin,Hemicentrotus pulcherrimus." Zoological Science. 14. 791-794 (1997)
• [文献書誌] K.Mitsunaga-Nakatsubo: "Arylsulfatase exists as non-enzymatic cell surface protein in sea urchin embryos." Journal of Experimental Zoology. 280. 220-230 (1998)
• [文献書誌] T.Kiyama: "Structure and function of a sea urchin orthodenticle-related HpOtx gene." Developmental Biology. 193. 139-145 (1998)