我々は、プロラクチン(PRL)によるイモリ精原細胞のアポトーシス誘起機構について研究した。本研究は、以下のことを明らかにした。 (1)精母細胞ステージのイモリにヒツジPRLを投与すると、精母細胞に分化する直前の精原細胞がアポトーシスを起こした。ブタFSHの同時投与はアポトーシスを回避した。精巣断片の器官培養の結果より、PRLは精巣に直接作用して精原細胞のアポトーシスを誘導する。 (2)イモリを低温に移すと、血中PRL濃度が3〜4倍上昇し、精原細胞にアポトーシスが誘導された。これはイモリPRLの抗体によって抑制された。イモリでは、春はPRLの血中濃度が低いため精母細胞は形成されるが、秋口に気温が低下すると血中濃度が上がるため精原細胞はアポトーシスを起こし精母細胞が形成されなくなると考えられる。 (3)CHXもPRL同様に精原細胞にアポトーシスを誘導する。カスパーゼの広い阻害剤であるzVAD-fmkはPRLとCHX両方のアポトーシスを阻害した。カスパーゼ3の広い阻害剤3のイモリホモログの遺伝子をクローニングした。ノーザンブロットの結果よりカスパーゼ3のmRNAは精原細胞のステージに強く発現していた。一方、Ac-VAD-CHOやAc-DEVD-CHOは効果がなかった。これらの結果、精原細胞のアポトーシスには未知のカスパーゼが関与していると考えられる。 (4)精巣の器官培養において、精原細胞はFSHがなくても6回の体細胞分裂まで進行するが、その後のアポトーシスによって精母細胞に分化できないことがわかった。つまり精原細胞が6回の分裂を完了した時点にチェックポイントが存在し、FSHがなければアポトーシスを起こすが、ある場合は7回目の分裂を行い減数分裂を開始すると考えられる。
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